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2001年宇宙の旅の影響を考える part1 A.I インターステラー 

今回は、SF映画史に燦然と輝く名作。2001年宇宙の旅が構成の作品群におたらした影響を、今一度考えてみたいと思います。まずは、2001年宇宙の旅の何が凄かったのか、整理してみます。

注意 今回紹介する作品のネタバレが含まれている場合がありますので、回覧は自己責任でお願いします

 

 

 

1 宇宙の表現の凄まじさ

2001年は、映画史上初めて、無重力を表現した作品と言ってよいでしょう。役者たちは作中、殆どのシーンで、安定して自立してはいませんし、天井を歩くシーンもあります。また、宇宙において、光は太陽光の一面しか当たりません。なので、作中に登場する宇宙船ディスカバリー号の外観を写すショットは、光の当たる部分は明るくなっていますが、反対側の部分は文字通りの漆黒。何も見えません。他にも、宇宙船が爆発する際に、全くの無音で爆発したり、68年の映画とは思えないほど徹底されたリアリティを保っています。では、ストーリーのおさらいもしておきます。

 

神になるのは猿か機械か?

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物語は、類人猿が謎の物体モノリスから、骨を武器にして同じ類人猿を殺害することを覚えるシーンから始まります。その後、人類が互いに核搭載型人工衛星で監視し、冷戦の緊張が極限まで高まったことを示すシーンが挿入され、木製探査船ディスカバリー号へと視点が移ります。乗組員は船長のボーマンとプールら5人の人間(そのうち3人は人口冬眠中)と史上最高の人工知能HAL9000でした。順調に進んでいた飛行の途上HALは、ボーマン船長にこの探査計画に疑問を抱いている事を打ち明けます。その直後HALは船のAE35ユニットの故障を告げるが、実際には問題ありませんでした。ふたりはHALの異常を疑い、その思考部を停止させるべく話しあうが、これを察知したHALが乗組員の殺害を決行します。プールは船外活動中に宇宙服の機能を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまいます。唯一生き残ったボーマン船長は、HALの機能を停止させ、木製探査の真の目的である、モノリスの発見を知らされます。っそして、木星の軌道上で巨大なモノリスと遭遇したボーマン船長は、スターゲイトを通り、「白い部屋」へ案内され、人類よりも高次の生命体とコンタクトを果たします。彼らは、肉体をも超越した存在でした。そしてボーマンは、彼らと同様に人類を超越した存在、スターチャイルドへの進化を果たすのでした。

非常に難解な物語です。補足として、何故HALが反乱を起こしたのかについてですが、木製探査(原作では土星)の任務のため船員とコミュニケーションを取るように指示されたと同時に、モノリスの調査の件は口外してはならないという命令を受けたために、矛盾を察知しておかしくなってしまった。というものです。これは続編の「2010年宇宙の旅」で説明される事実です。他にも、意味不明なシーンがたくさんありますが、それらすべてのシーンは映画内では全く説明はありません。本当は上映前に、映画内の要素を、専門家たちの意見からコメントするシーンが挿入される予定でしたが、映画のマジックが消えることを恐れた監督のスタンリーキューブリックが、削除してしまいました。この物語全体は、人類と機械のどちらが神にふさわしいかの代理戦争の物語であるといえます。主にルネサンス以降のヨーロッパで、既存の宗教を否定する考え方が生まれました。ルネサンスとは、物事を科学的に考える動きです。つまり、それまで盲目的に信じていた神の存在を、科学的に証明しなければならなくなりました。そこで、この映画が出した答えは、人類はより高次の存在=神の導きによって、それらと同列の存在になれる。ということです。バベルの塔の伝説が証明するように、旧来の紙は、人間が神と同列になることを良しとはしませんでした。だからこそ、この映画は、ポストモダン的であり、後世にまで語り継がれる名作になったのでしょう。

この映画は、キューブリック監督の次回作以降でも繰り返し描かれる、人間の本性は暴力であるという点も、裏のテーマです。冒頭の、類人猿のシーンがその証拠です。次回作の時計仕掛けのオレンジではよりこのテーマが強調され、さらにそこから、人間から暴力を剥ぎ取ったら、屍と同じだ。というところにまで踏み込んでます。シャイニングや、フルメタルジャケットにも通じます。

さて、それではのち作品から感じ取れる、2001年のエッセンスを見ていきましょう。

2 HALが勝った未来 A.I           

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地球温暖化が進んで一部の海に近い土地が沈み、妊娠・出産に厳しい許可制度がしかれ、人間の代わりに多くの資源を必要としないロボットが活躍する未来。その時代に人間と同じ愛情を持つ少年型ロボットとして開発されたデイビッドは、彼を製作したロボット製造会社の社員、ヘンリーとその妻モニカの元へ試験的に送られる。夫妻には不治の病を持つ息子のマーティンが居たが、現在は冷凍保存で眠っていて目覚める保証はなく、実質的に子供がいないのと同じだった。起動させたモニカを永遠に愛するよう、元々変更がきかないようにプログラムされたデイビッドだったが、マーティンが奇跡的に病を克服して目を覚まし、退院して家に戻ってくる。それからモニカはデイビッドよりもマーティンの方に特に愛情を注ぐようになった。ある日マーティンとデイビッドが遊んでいる最中、マーティンの生命に関わる事故が発生し、デイビッドは森に捨てられる。デイビッドは、友達の玩具型ロボットのテディ、森で出会ったセクサロイドのジゴロ・ジョーとともに旅をする。デイビッドの願いはただ一つ、モニカに愛されること。果たして彼らの旅の運命は…

あらすじを書いている段階で既に涙ぐんでいる自分が居ます。この映画は日本での宣伝は、母と子の感動物語ですが、実際はほとんどそんなシーンはありません。ですが、ドラゴンクエスト5の主人公並みに哀しい運命を背負ったデイビッドが迎える結末には、深い感動があります。きしくも2001年に公開されたこの映画ですが、もともとはキューブリックが監督する予定でしたが、亡くなってしまったために、スティーブンスピルバーグが監督しました。その結果、彼が愛好する、「ピノキオ」のエッセンスをふんだんに盛り込んだ作品に仕上がっています。エンディングで流れる「星に願いを」も、また感動を増幅させてくれます。この映画の何が2001年に関係あるのかと言えば、序盤から終盤まで一貫して描かれる、機械の描写です。つまり、もしボーマン船長とHALの戦いで、HALが勝っていたら?モノリスはHALを後継者として認めたのではないのでしょうか。また、愛されるようにプログラムされておきながら、その当人に捨てられる矛盾を残酷に突きつけられるデイビッドも、HALに通じる部分があると思います。観るのが辛くなるほどにとことんかわいそうなデイビッドの旅路。機会があれば、ぜひ見てください。

3 人間ナメンな! インターステラー

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近未来。地球規模の植物の枯死、異常気象により、人類は滅亡の危機に晒されていた。元宇宙飛行士のクーパーは、義父と15歳の息子トム、10歳の娘マーフィーとともにトウモロコシ農場を営んでいる。

マーフは自分の部屋の本棚から本が勝手にに落ちる現象を幽霊のせいだと信じていたが、ある日クーパーはそれが何者かによる重力波を使った2進数のメッセージではないかと気が付く。クーパーとマーフはメッセージを解読し、それが指し示している秘密施設にたどり着くが、最高機密に触れたとして身柄を拘束される。そこでクーパーはかつての仕事仲間のブランド博士と再会し、大昔に無くなったNASAが秘密裏に復活し活動を続けていることを知らされる。NASA土星近傍のワームホールを通り抜けて、別の銀河に人類の新天地を求めるプロジェクト、ラザロ計画を遂行していたのだった。48年前に「彼ら」によって創造されたと考えられているワームホールを通過し、すでに三名の先駆者達が、入植が期待できる惑星から信号を送り返している。教授は、第二の地球となり得る惑星を探すミッションにパイロットとして参加するようクーパーを説得する。帰還できたとしてもそれがいつなのか不明なミッションに、マーフは激しく反対する。二人は和解の機会を得られないまま、クーパーは出発の日を迎えてしまう。クーパーはマーフに「必ず戻ってくる」とだけ言い残し、ブランド教授の娘のアメリア・ブランド博士らとともに宇宙船エンデュランスに搭乗し地球を後にする。彼らは人類を救うことができるのか?

ダークナイト」「インセプション」などの巨匠、クリストファーノーランが2001年へ挑んだ野心作です。この映画の特徴としては、CGをほとんど使わず、60年代の技術で撮影された作品であることです。これによって、より2001年に近い、フィルムや特撮による撮影を実現しています。とはいっても、2001年のリメイクというわけではなく、最高級のフォロワー作品であると思っています。何故かと言えば、主人公の設定と、オチとなる「彼ら」の正体によって、この映画は難解さと同時に、我々に普遍的な、愛の物語になっているからです。まず、クーパーとマーフィーの親子は、和解できずに別れてしまいますが、その後の展開として、2年が経過したのちに土星付近に接近したクーパーら4名のパイロットと、人工知能ロボットTARSとCARSは、先駆者のミラー飛行士が待つ水の惑星に到達します。水の惑星と言う設定はおそらく、「惑星ソラリス」や「鏡」のオマージュでしょう。ですがあちらのように、意思は持っていません。この惑星は、土星付近にあるブラックホール、ガルガンチュアの重力によって時間の流れが歪められ、惑星での1時間は地球の7年に相当することを知ります。躊躇するクーパーをよそに、一同は惑星に降り立つこととなりますが、ミラー飛行士の姿はなく、飛行船の残骸のみがありました。間もなく彼らに高波が襲い、1人が死亡し、宇宙船にも水が浸入するも、間一脱出に成功するものの、地球では23年が経過しているということを知る。マーフィーはすでに出発時のクーパーと同じ年齢に達しており、この調子では先に娘のほうが死んでしまうだろうであろうことが提示されます。ここまでは事前情報として知っておいておいてもいい部分ですが、ここから先は、この映画の本質にかかわる部分に言及するので、鑑賞している方は先に進んでください。

 

 

氷の惑星にいたマン博士とクーパーの対決は、ボーマンとHALの戦いに相当します。 孤独を恐れた男の名前が「ヒュー・マン」とは、皮肉なものです。愛を糧にする男と、愛を忘れた男の戦い。非常に意味深いものを感じます。また、2001年の中で印象的だった、宇宙での無音の爆発シーンも再現されています。そして、マーフィーとの再会が果たせないことを悟ったクーパーは、アメリアを脱出させ、自分はTARSと共にガルガンチュアの内部に突入します。そこで、クーパーは「彼ら」が創造した、立方体が何層にも折り重なった4次元超立方体テサラクトにたどり着きます。そこは、過去、現在、未来、全てがつながっている空間でした。ここは、スターゲイト及び白い部屋に相当。インセプションでも白い部屋を出していたノーランは、本当に2001年が好きなんだと感じさせます。クーパーは自分の家の本棚から本を落とすなどして、何とか自分が宇宙へ行くことを阻止しようとしますが、過去には介入できません。焦る中TARSが放った一言から、、自分は過去を変えるのではなく、未来を変えるのであると悟ったクーパーは、TARSに収集させた特異点のデータを、現在のマーフィーのアナログ時計の秒針の動きをモールス信号にして送ることを決めます。そして、彼女は見事それを読み解き、ブランド博士が成しえなかった重力方程式の真の解を解き明かすことに成功します。その瞬間、テサラクトは崩れ去り、土星の軌道上のスペースコロニーの病室で目覚めたクーパーはたくさんの子供と孫に囲まれた年老いたマーフィーと再会する。そこで、残されたアメリアを救出するよう言われたクーパーは、修理したTARSと共に、彼女のもとへ向かう。

素晴らしい物語です。2001年からさらに踏み込み、人類を次のステップへ進ませるのは、他ならぬ人類自身である。という、人間賛歌を大々的に打ち出した物語と、クーパーとマーフィーの、時間に引き裂かれた親子の物語を巧みにリンクさせる構成には脱帽です。四次元空間のシーンは、「君の名は。」の 口噛み酒で時空を超えるシーンの元ネタではないでしょうか。こちらも、時間に引き裂かれた男女の物語でした。クリストファーノーランはまた1つ傑作を世に送り出したのです。次回作の「ダンケルク」も楽しみです。

あとがき

インターステラーで登場するTARSは、何故HAL的ポジションではないのかと言うことですが、もしかしたら、2001年の続編「2010年宇宙の旅」を踏まえたからではないでしょうか。2010年では、消息を絶ったディスカバリー号を捜索するために、米ソ合同で計画が立案されソ連側の船レオーノフ号が現場へ行きます。そこには、モノリスの調査責任者フロイド博士、HAL9000の開発者チャンドラ博士と、ディスカバリー号の設計者ガ―ナウ博士も乗っていました。レオーノフ号は木星の上層大気を利用したエアロキャプチャーの後、イオの上空に滞空する無傷のディスカバリー号を発見。チャンドラ博士とカーナウ博士が乗り込み、船とHAL 9000を再起動させます。更にディスカバリー号の近くには9年前にボーマンが接触した巨大なモノリスが浮遊していました。フロイド博士の反対を押し切ってソ連側は作業ポッドで再び人的接触を試みるが、突如として放射された電磁波によって乗り込んでいたブライロフスキー共々消滅させられてしまいます。電磁波の正体はモノリスとの接触で実体を持たないエネルギー生命体となったボーマンであり、地球まで到達したボーマンは人間だった時の大切な人々を訪ねます。

直後に緊張状態にあったアメリカとソ連が遂に実質的な戦争状態に突入。この事態を受けて、アメリカ側の乗組員はディスカバリー号に乗り移る事を余儀なくされる。困惑するフロイド博士の前にボーマンが実体となって現れ、「2日以内に木星から立ち去れ」と警告する。フロイド博士は理由を問うがボーマンは「素晴らしいことが起こる」とだけ告げて消えます。フロイド博士は再びレオーノフ号に移り、他の乗組員を説得するのに苦心するが、その中途で浮遊していたモノリスが突然姿を消し、代わりに木星に巨大な黒点が出現、着々と巨大化し続ける黒点を分析すると、その正体は無数のモノリスでした。異常に気づいた乗組員達はディスカバリー号をブースターとして使用し、予定より早く木星圏を脱出する計画を立てます。しかし、それはディスカバリー号…つまり、HAL にとって「自身を遺棄せよ」という事でした。この命令で、HAL が再びストレスにより故障するのではないかと乗組員達は恐れるが、チャンドラ博士の全てを打ち明けた説得でHAL は命令に従います。HAL は事態の真実を語ってくれたチャンドラ博士に感謝の意を示します。

その後に、HALはモノリスに導かれボーマンと再会し、地球に向けてメッセージを発信し続けます。モノリスによって質量が増大した木星は新たな恒星「ルシファー」として輝きだします。その奇跡的な出現によって、米ソは戦争を中断します。

この物語は、HALを救済する物語です。ある種特攻と言えるHALの行動に、前作を知っている人間であればあるほど、感慨が大きいことでしょう。終盤の展開は、おそらく、part2で詳しく取り上げる「機動戦士ガンダム」の中でも「逆襲のシャア」を思い出す人が多いのではないでしょうか。そのあたりも含めた、ガンダムと2001年の関連性を、次回の記事で書きたいと思います。それでは、最大の文字数となった今回の記事をここまで読んでいただき、ありがとうございました。