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「時間」を感じさせる作品たちpart1  「クラウド・アトラス」 「LOOPER」 「メッセージ」

 

今回は、数あるSF映画の中でも、時間、ループが関連する作品を中心に取り上げます。表面上のとっつきずらさとは裏腹に、きちんとテーマを読み解けば、感動できる作品ばかりです。それでは、紹介していきます。

 

注意 今回の記事には、ネタバレが含まれていますので、回覧は自己責任でお願いします

 

 

 

1 時を超え繰り返す魂のループ「クラウド・アトラス

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この映画、非常に説明しにくいです。なぜならば、アメリカ独立時から、文明崩壊後の遠い未来まで、6つの時代の物語を同時に語っていくという物語構造を持っているからです。具体的に言えば、「1849年の南洋、奴隷貿易の契約を終えた弁護士の青年が、帰りの船の中で出会った黒人の密航者との友情」「1931年のイギリス、作曲家を志す青年が、巨匠のもとで修行するうちに、意見の齟齬を起こしながらも、「クラウド・アトラス六重奏」を完成させるまで」「1973年のアメリカ、原発を巡る陰謀によって殺された科学者が遺した報告書を託された女性記者が、亡き父の戦友と共に、殺し屋に立ち向かう。」「2012年のイギリス、編集者の老人が、儲けた金をギャングに恐喝され、兄に助けを求めるが、逆に悪徳老人ホームに入れられてしまい、なんとか脱出を図る」「2144年のソウル、遺伝子操作によって労働力と化している合成人間のうちの一体の少女が、革命家と出会い、世界の実情を知っていく。」「2331年のとある島、文明は崩壊し、人類は村社会へと戻り、女神を崇めながら生活していた。人食い族におびえる村の住民の男は、『昔の人』の技術を持つ一人の女性を、島で最も危険な『悪魔の山』へと案内するまでの物語」と、非常に複雑で、それぞれの話が密度を持った物となっているため、3時間超の大ボリュームとなっています。しかし、この作品はぜひ皆さんに見てもらいたい作品です。この6つの物語、出てくる役者は同じです。それぞれの時代で異なる魂に転生しています。面白いのが、前の時代で悪人だった人物が、後の時代には、善人になっているところです。転生を行う人物の体には、彗星型の痣があるという設定も、なんとなくジョジョの奇妙な冒険を想起させます。黒人であるハル・ベリーが白人になっていたりと、魂に人種はないことを教えてくれるスター役者たちの七変化も魅力です。監督は「マトリックス」のウォシャウスキー姉妹(現在)と「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティグヴァの3人です。それぞれが3パートずつ担当していますが、だれがどれを撮ったのかは一目瞭然です。ウォシャウスキー姉妹の姉、ラナさんが仏教に造詣が深いこともあり、このような映画を作れたのだと思います。初見時の胸が震える感動を、ぜひ、皆さんにも味わってほしいです。

 

2 暴力の連鎖を止めるためには、「LOOPER」

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2044年のカンザス州、未来の犯罪組織の依頼で、送られてくる人間を殺す殺し屋、通称「LOOPER」の主人公のジョー。ある日、依頼で送られてきた人間は、30年後の自分だった。自分を取り逃がしてしまったジョーは、彼を追っていくうちに、彼の標的が、2044年ではまだ幼い子供である未来の犯罪王「レインメーカー」を殺すことであると知る。彼が現れると踏み、ジョーレインメーカーの居所へと向かうが…

 

まずこの作品の特徴としては、何と言っても設定面での斬新さです。30年後の自分と戦うことになるまでの、未来世界の描写として、車、銃が西部劇の時代まで退化したかのようなレトロフューチャー感。これによって、新鮮でありながら、どこか乾いたバイオレンスのにおいを漂わせます。ジョーが30年の間に何が起こったかを見せるシークエンス、田舎の家にやってきたジョーが出会う未亡人の女と、未来の犯罪王。そしてそれまでの展開が結実して導き出される、ジョーの選択。あのラストシーンによって、この映画のタイトルの「LOOPER」が、主人公のことではなく、無限に繰り返される暴力、復讐のループであることがわかるのです。監督のライアン・ジョンソンは「スターウォーズ エピソード8 最後のジェダイ」の監督も務める実力派。観て損はしない一作です。

3 あなたの人生の物語 「メッセージ」

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世界各地に突如飛来した謎の宇宙船。言語学者のルイーズ、物理学者のイアン、アメリカ軍大佐のウェバーらが調査を開始する。学者たちに与えられた任務は、この宇宙船の中にいる宇宙人「ヘプタポッド」の言語を解読すること。人類に示されたメッセージとは何か?

 

この2017年と言う時代。トランプが猛威を振るい、北朝鮮がミサイルを発射し、イスラム国がテロを起こす時代。この映画は、まさしくこのような時代にふさわしい映画です。12個の宇宙船と言うモチーフは、キリストの使徒を想起させますし、この映画で示される未来は、世界が一つになった未来です。対話で、人類は変われるという可能性を示してくれました。この展開は、アーサー・C・クラークの「地球幼年期の終り」を思い出します。そして、もちろん同氏の「2001年宇宙の旅」も思い出されます。ルイーズを迎えにくる小型宇宙船は、モノリスの役割ですし、白い部屋で進化の核心を知るという点も似ています。ここまでの話は、所詮、大きな世界の話に聞こえるかもしれません。しかし、この話の凄いところは、最も人々に普遍的な「人生」の話を語って見せている点です。ルイーズはヘプタポッドから授かった表意文字によって、過去、現在、未来を同時に認識できるようになります。彼女が見た未来の中には、不治の病で死ぬ娘も含まれています。なぜ彼女は死ぬことがわかっているのに、娘を産んだのか? それは、娘がいなければノンゼロサムゲームのくだりが発生しないという理由もありますが、それよりも、娘を失う悲しみより、娘が生まれたという喜びを取ったのではないでしょうか。思い出すという行為に、時系列はありません。子供の時から、結婚記念日、老年のときまで、バラバラに思い出すはずです。劇中曲も、同じような旋律がループしていたり、家の天井で始まり、天井で終わる構成であったり、まるでヘプタポッドの文字のような円環構造の作品です。彼らに目はなく、前や後ろと言う概念がないことも一因でしょうか。この映画が今公開されて劇場で観られたことを、本当にうれしく思います。

以上でこの文を終わります。ここまでこの文を読んでくれた方、ありがとうございました。